二合院住居

二合院住居

ソーラーエネルギー住宅デザインコンペティション応募作品
(最優秀賞受賞)

2011年

「ソーラーエネルギーを取り込むこと=住まいを外の自然に開くこと」
外部から享受できる自然の豊かさを住まいの中に取り込むということは、一方でラディカルな温熱環境の変動を強いられる恐れがあります。しかしこれを上手くコントロールできるように建築計画をすれば、その恐れを最小限にして、自然の豊かさを取り込んだ住まいを手にいれることができます。この提案はソーラーエネルギーを効率的に取り込みつつも豊かな建築空間を生む断面計画を凝らしている点を高く評価していただきました。

【作品講評 高間三郎】

ちょうど審査日の翌日に起こった震災でエネルギーを取り巻く環境も大きく変わり非常時の対応を含めて現在参加しているプロジェクトでも再検討しようということが多い。ところで金谷案に関して言えばこうした影響を受けた今さらにそのデザインの意味が増したように思える。この案の特徴は単にソーラーエネルギーのエンジニアリングを導入しただけでなく二合院住居というソーラーエネルギーを軸としたライフスタイルを提案していることにある。技術的には南側の居住スペースをパッシブソーラー北側の団らんスペースをアクテイブソーラー(Solamo)で環境制御するシステムになっている。南側のリビング、子ども部屋や主寝室の各部屋はダイレクトゲインシステムで冬期の日射はコンクリート床や潜熱蓄熱材で蓄熱制御している。夏の日射はファサードシステムのルーバーで遮蔽し比較的奥行きの少ない部屋をクロスベンチレーションで良好な室内環境を維持している。やや気になるのはSolamoを使ったコンペのせいもあるが北側棟のソーラーパネル集熱面積から得れるエネルギーに比べて暖房、給湯など消費量が大きすぎるように見えることで、これは応募案に共通している。ただそうした点を差し引いた上でも単なるシステム提示でなく自然エネルギーと生活を結びつけた試みはこれからの住宅設計の一つの方向性を示している。二合院の発想には江戸の庶民が洒落と風流で四季を過ごしたようにエネルギーを消費して均一な環境を得るのではなくあえて不均一な環境をライフスタイルで楽しむ心の余裕が感じられる。これからはエネルギー制約によっていろいろな意味で人間の生活そのものが変化するだろう。ただそれを受け身の我慢でなくて自然エネルギーを味方にして楽しく暮らすことこそ長い目でみて地球環境にもよいのではと思う。このことをコンペ案としてわれわれに見せてくれた金谷案は最も優れた提案だと思う。

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